思い出せない(いつのまにか死んでしまうものたち)/ホロウ・シカエルボク
 
飼っていた犬が
轢き逃げされて首の骨を折られて死んだ
運転手を見つけ出して殺そうと思っていた



でも忘れていた




犬はその後二匹も三匹も家の庭先に繋がれた

ろくに血の色が見えない死だって在るさ







すべて
もろくなった廃墟の柱だった

すべて
喉を失くしたうたうたいだった

すべて


自分の書いたものすら判らなくなるほどに
もうろくした古い詩人だった






ずう、と車が目の前をよぎるたびに
いつかの記憶と現在がシンクロする
あの時と今と何が違うというのだ
先を急ぎすぎた心臓が抑揚の無いビ
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