海馬/山中 烏流
び
(波音は
迫りきったあとで
崩れてしまう
しまうから、また
さざめくのだろう)
一瞬の空白で
生き返る、ように
汗ばんだ腕が
引きずられていく
そのあとで
砂浜に刻むものは
幾筋にもなる
歌声だった
戸惑うために、波
旋律の間で
囁くように、導く声も
多分
私なのだろう
多分、
「そうして
開いていく狭間
伏せようとした睫毛
私は
私が思うより、深く
寂しいのだと
、響く」
満ち過ぎたあとは
零れ落ちて、しまって
夕凪が遮る音に
気付くことす
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