海馬/山中 烏流
 

 
(波音は
 迫りきったあとで
 崩れてしまう
 しまうから、また
 さざめくのだろう)
 
一瞬の空白で
生き返る、ように
 
 
汗ばんだ腕が
引きずられていく
そのあとで
砂浜に刻むものは
幾筋にもなる
歌声だった
 
戸惑うために、波
 
旋律の間で
囁くように、導く声も
多分
私なのだろう
 
多分、
 
 
「そうして
 開いていく狭間
 伏せようとした睫毛
 
 私は
 私が思うより、深く
 寂しいのだと
 、響く」
 
 
満ち過ぎたあとは
零れ落ちて、しまって
夕凪が遮る音に
気付くことす
[次のページ]
戻る   Point(3)