虚偽と忘却のエピソード/atsuchan69
 
実をまえに耳を塞いでいるんだろ」
 そこでYに負けじと、わたしは言った、
 「よーし。それならもっと教えろ」
 「いいとも。リフトへ引き返す、さらにもう一層下の思考操作を研究する『夜の世界』だ。とても危険だが覚悟はよいかな?」
 「ふん」
 わたしは、真顔のYにそっぽを向いた。

 真赤に焼けただれた空が葦(アシ/ヨシ)の茂る沼地を非道の色に染めていた。
 リフトの扉が開くと、咄嗟にここが地獄の一丁目だと感じた。
 「道がヌカルんでクルマは走れない。外へ出て、生身で歩くことになるがいいかい?」
 「ヤツに喰われたりはしないか?」
 「その心配は殆どいらない」
 「なぜだ?」
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