虚偽と忘却のエピソード/atsuchan69
 
さあ、もう着くよ。このリフトはたった今、秒速五メートルの速さで降下している」
 おそらく磁力による反発力がブレーキとして働いているのだろう。徐々に、光の点滅が遅くなってゆくのを感じていた。車重二トンを超える鉄の箱を載せたまま、減速から数秒後、ほとんど床に接触した気配もなくリフトは静止した。「着いたよ、もうじきヤツに逢えるぞ」

 扉が開くと、まるでそこが地下とは思えないほどリアルな、つよい真昼の陽光が薄暗いリフト内部に射し込んだ。
 Yはおもむろにクルマを急発進させた。
 「なんじゃあ、ここは!」
 円筒状のリフトを出ると、そこは蝶の舞う広大な花畑だった。なだらかな起伏の丘と小川のせせ
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