虚偽と忘却のエピソード/atsuchan69
 
マジさ」
 そのとたん、わたしは素っ頓狂な声をあげた。
 「あっ、クルマが沈んでいる!」
 「だから言ったじゃない、地下へ行くって」
 Yは、真顔になって口を尖らせた。
 まもなく、暗闇に連続する光の点滅がわたしの網膜を刺激した。
 「でも、まさかこんな映画みたいな‥‥」
 「まあね。いつだって現実ってのは、軽く映画をこえているのさ。でも多くの人たちの暮らしにとってそれはあまり相応しいことじゃないからね‥‥。俺たちが守ろうとしているのは、実をいうと君たち一般人が安易にえがく『類型構造』そのものなんだ」
 「よくわからん、それに耳鳴りがする」
 「独り言だよ、気にしないでくれ。さあ
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