虚偽と忘却のエピソード/atsuchan69
 
付けだよ、生贄という名前の」
 「すると、この怪獣が巷に現れるというのは、餌付け役のいなくなった世界情勢と密接な関わりがあるということか」
 そこで前方の信号機が赤となり、やむなくクルマは停まった。
 「然り。第一に、啓蒙思想をふるう僭主に操られたまま歴史的必然(?)によって生じた絶対君主制の衰退と、近代のそれに替わる盲目的デモクラシーの台頭。第二に、資本主義世界の影であるソビエト社会主義共和国連邦の崩壊。第三に、人類の叡智をはるかに超越した大自然のシステムが『敵』である我々を滅ぼすために、かつてこの星では希少種にすぎなかったフルフルを異常に繁殖させたともいえる」
 「それでその、我が国の
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