鷺草のよう         /天野茂典
 
って泣いた
  どれだけ自分が 不幸な十字架をせおっているかを
  語るのだった 父は私生児で
  幼い頃に もらい子になった
  小学生になると 学力抜群で
  優等賞を何度ももらった 全甲で学年トップだった
  話がうまくて 女子組みにまでかいだされ
  かなりうけていたらしい 素行だけが乙だった年もある
  養父先はクズ鉄商だった 養父は父が5年生のときに
  後妻をもらった 弟ができた
  父は継母に阻害された 父の担任坂本団三先生は
  新しい家族に 父の中学進学をつよくもちかけた
  拒否されたのはいうまでもない
  父の呪われた人生はここから はじまったのだ
[次のページ]
戻る   Point(6)