二十年後/三州生桑
薄汚れて・・・つまりは建物全体が灰色になってゐる。店内は客も疎ら。行き付けの書店は、怪しげな健康食品店に取って代はられてゐた。
「ほら、お客さん、コレ飲んだ後にね、このダンベル持ち上げてご覧。スッと軽くなってるから」
二階フロアの半分を、ゲームセンターが占めてゐた。二十年たつと、アーケード・ゲームもかなり様変はりしてゐる。まづ、あの轟然たる騒音が掻き消えてゐた。プレイヤーたちは、それぞれ特殊なゴーグルをかぶり、手には物々しいグローブをはめ、首を振ったり腕を伸ばしたりしてゐる。てんでばらばらに太極拳の練習をしてゐるやうにも見える。それでもレトロ好みはゐるやうで、一隅にスロットマシンが数台置い
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