サークル/鈴木
予定ある?」「いえ」「それなら飲みに行かない?」あれよの間に僕は彼女の目の不思議な引力に吸い寄せられ、気付くとアルミ缶に代わり二合徳利片手に笑声けたたましく「入会します」と当時の幹事・馬場芳久先輩へのたまっていた次第であるのです。頤を放った芳久先輩が「吉報! そして冒険だ」エレキギター片手にゲロリアン大陸へ出立すると、はるか先輩は澱んだまなざしで数分前より構想を練っていた自作の舞踊「ひも理論」に没入し始めたようでした。次々と繰り出される手招きが周囲を十次元のかなたの秘密めいた暗示へ誘っている風でした。そして僕は確かに見たのです、虚ろな空洞にどこまでも玄なりと思われた彼女の目が光を取り戻し、ちらとこ
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