サークル/鈴木
眠っていたらしい。まず目に付いたのは空になった錠剤入れだった。「僕は小説を書き上げ煙草を買うために部屋を飛び出した。次の瞬間に起きた」彼はおもむろにノートパソコンの画面を覗いてみた。「ああ」そこに表示されていたワードプロフェッサーには一文字も書き記されていなかった。
「僕は作者ではなかったのか?」
以上の一万八千文字弱を書き上げると僕はデータを上書き保存した。ともかくも執筆を終えた達成感に身を浸してぼんやりと考える。彼のように一個の宇宙を円環のもとに完結させる人間は、自身も同じ秩序に従うことをうけがう必要がある。翻ってそう主張する僕自身も円の一つである可能性は否めない。今しがた書き上げた作品
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