サークル/鈴木
きまい。逆に浣腸健康法を施術され切れ痔になりそうで心もとない。「糞」呟く。映画ならばたいてい役者は監督の命令を聞くはずで、そうでなくともよいものを作るため努力をするだろう。だが小説の登場人物は本番中だろうが休憩中だろうがおかまいなしに好き勝手ふるまう。考える。この隔絶を結びつける手段はないのだろうか。机の上にはケーブルの外れた電話機、未開封の缶ビールと睡眠薬。「あ」彼は戦慄した。やがて数分間の瞑目の後、目の前の缶を掴みプルタブを引き一気に飲み干し、再びキーボードを叩き始めた。「そうだ」これしかない。「僕も」酔えばいい。「文学かぶれ上等じゃないか」快調に書いていく。笑いがこみ上げる。しかし彼は三つの
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