サークル/鈴木
 
ノレの作り出した人間すなわち分身に指摘される筋合いはないだろう。才能のない自堕落者か、ほざいてくれる、まさにその凡人に破滅をもたらされるとも知らず――待てよ。作者は焦った。既に手綱の効かない登場人物が、果たして都合どおりプロットを追ってくれるだろうか。答えは否、意識が混濁するまで乱酔した二人はもはや度し難い。高田はるかは馬場芳久と間違えて升尾角太郎に危害を加える可能性があるし、西島匠に到っては語りの途中で眠りこけて小説そのものが終わりかねない。一応、物語を終局に導く人物が「ぽおつ升」に現れる予定ではあるが、こいつ、所沢治の性格は気弱もいいところで、微醺を帯びた程度で二人の尻に火をつけることはできま
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