サークル/鈴木
 
っと世を作り出す神を気取った、その実、才能のない自堕落者に決まっている」なんて言いだすじゃじゃ馬ではありますけれども。――

――作者はキーボードから手を離した。ディスプレイにこびりついた唾の跡が卒然と気になり始めたのだ。疲労感を払うため首を回すと眩暈に襲われた。視界の靄が晴れると共に目に飛び込んできたのは、いつもと変わらぬ自室だった。床は書物と洋服、ビニール袋や空き缶にペットボトルで見えなくなっている。無作為に目を向けるとチョコレートの銀紙を軸とする右で歯ブラシの黄ばんだ毛が広がり、左で二ヶ月前に食べたフライドチキンの骨が乾いている。机の上にはノートパソコンのほかメモ帳、ボールペン、煙草の空
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