サークル/鈴木
の空き箱、ケーブルを外した電話、未開封の缶ビールと睡眠薬が散乱している。彼はメモ帳を手に取り表紙を開けた。絵――キュビズム風の女性が頭部だけ黒く潰されている。顔をぬぐう。三日分の脂で指が滑る。ページをめくると両のページは罫に即してみっしりと字で埋められていた。「小説『サークル』メモ。登場人物。西島匠、視点者、大学二年生、サークル記憶会所属、切れ長の目と小鼻を持つ化政文化のような顔、女運なくフラれた回数は二桁に上り、高校生のとき知人数名に死なれた経験から親しい人物を偶像化する傾向がある、今回の主題は彼が人間をありのままにつかむための人間的成長」メモ帳を放りモニターに映された執筆途中の原稿を読み返しつ
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