サークル/鈴木
に、悲しむはるか先輩に対して情報を隠匿した自己への嫌悪が増大していきました。またしても僕は自己憐憫の塊、局部をしごく手を精神に変えただけで何ら進歩のない類人猿でありました。個室を出て洗面台で顔を六回すすぎました。鏡を見ると赤い細目が腫れていました。知っていること全てをはるか先輩に話し、今まで黙っていたことを謝ろうと決心し、僕は頬を両掌ではたきました。そして便所の出口へ向かって一歩を踏み出したそのときに、鈴木が入ってきたのでした。「大丈夫か西島くん」「ああ。吐いたら楽になった」快活な調子で言い放った僕は一升を飲み下した男にふさわしからぬ精悍な顔つきをしていたことでしょう。が、文学かぶれは作家に必要な
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