サークル/鈴木
 
るのを拒む臆病者が見えました。僕は思いました。いつも本当の意味で吐いたことがない、モザイクの美しさに惑わされて、その奥を覗こうとしたことがないと。僕はうつつと認めることにしました。あのとき自室で気を失いかけながら薄目で見たことがら、すなわち芳久先輩と七海がくちづけしていたことを。しかしやはり酔っていたのでしょうか、昨晩の過ちは酒癖の悪い二人にありがちな冗談だろうと僅かな希望に信頼を寄せることにしました。他に解釈できなかったのですから仕方ありません。愛する人そして尊敬する人と過ごした一年半を否定する考えなど起きようがなかったのです。ただ、欲情を成就させんがために、いえ成就させる妄想を続けんがために、
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