サークル/鈴木
 
何も変わるはずはないのです。変わったとするなら、きっと僕の方なのでしょう。やがて眠気に苛まれて視界がぼやけ、眼前の男女が見分けられなくなって致した瞬きを境に、遠く後方から人気ミュージシャンによるポップスと、炭火で鳥を焼く音が聞こえてきました。そう、「ぽおつ升」の便座に伏している、今より二十分前に戻っていたのです。高揚と不快は消え、心身は清風が通ったように覚醒していました。攪拌しすぎていまだ戻らない神経が完全に再構成されるのを待ちながら、僕は水に浮く吐奢物を見つめました。血肉になるはずだった胃の内容物が、もはや忌み嫌われるゲロでした。流してしまい再び水面に目を向けると、夢で見た光景に意味を付与するの
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