サークル/鈴木
タツの上に鎮座ましますテスト勉強の跡に満足しながら僕は胸を躍らせておりました。アルバイトを終えた七海が今年度後期からの通例として毎週日曜日の夜を共に過ごすため、大学からほど近い我がアパートに向かっているはずだったからです。始まりは、彼女の予想到着時刻まで三十分ほど間があったので「マヌ法典」を読み進めようかと手に取った矢先のことでした。インターフォンが鳴り、鍵をかけ忘れていたドアが開いたのです。僕は瞬間、少し早めに労働を切り上げた恋人が息せき切って入ってくるものかと思い顔面を弛緩させ腕を広げました。が、黒革の手袋に握られた未開封の一升瓶が意識と扉の間隙を縫って現れ、次に「よう」という野太い声、続いて
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