サークル/鈴木
ろなく、つまみもあったものではなく、安酒特有の化学的な後味が胃から頭部へ飽和し悪酔いと俗称される症状一般を引き起こしてくれました。まず目の玉が勝手に回転を始め、意のままに操れぬ器官への憤りが動悸、息切れ、頭痛や吐き気に置換されていきます。このときの手際は見事なもので「あ、頭いたいかな」と思った瞬間に頭蓋は銃器で爆砕されたような感覚に陥り、「あ、気持ち悪いかな」と揣摩した刹那に胃壁では甲虫が繁殖しているような不快感が広がるといった具合です。悪漢ほど忖度が上手いとはよく言ったものです。言わない? 僕が今しがた考えた台詞ですからね。――申し訳ありません、いまだに悪酔いを引きずっているもので。そんなわけで
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