サークル/鈴木
 
かもしれないという僕の期待を、浅はかな世辞で裏切ってくれたのに拍子抜けしたのです。できあがったらしい小説もたかが知れていますね。彼も僕の幻滅を感じ取ったのか、はるか先輩が再び「なぜゆえ」とせがみだすのを無視して話頭を転じました。だがそれがまたいけなかった。まったく、自分だけは空気を読んでいると勘違いして場を悪いほうへ転がしていく人間とはどうしようもないものです。「ところで先輩と西島くんは何を話していたのかな」とたんに、鈴木の出現以来ずっと上機嫌だったはるか先輩の表情が凍りつき、僕は誤魔化しの笑みで、やってきた発砲麦芽飲料と食物を店員から受け取ってやるしかありませんでした。沈黙の経過と共に鈴木も、先
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