蝉の砂時計/たりぽん(大理 奔)
 
る。遊ぶように、苦しむように。そうか、空が海をさえぎっているからだ。海が無限じゃないからだ。境界線を越えていく。果てまではいけないけれど越えていく。その向こうには掴めないものが漂っていて、空には夜光虫がばらまかれたりもするのだ。私は境界線をさがしてもっと手を伸ばす。指先がフロントガラスに突き当たって、目が覚める。境界線に守られ、それに世界などと名付ける私は手に入れられない。自由よりも自由な、辿り着けないという無限を手に入れることはない。

 また蝉のことを思う。

 砂時計はいつか逆転する。蝉は地中より出て枝で鳴く。境界線を越えて新しい生を得てまた彼らの海に戻っていくために。私は目に見えな
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