「 いつか、どこかで春が。 」/PULL.
 
やつ、
の手は刺すように冷たい、十二、引きずり戻
される、十五、やつの口がさらにおおきく裂
けた、息、がかかる、やつの息は冷たい、こ
の冬よりも冷たくて、まるで白く、ない、や
つは死んでいる、やつに喰われればあたしも、
死ぬ、息は白い息は白い、あたしの息はまだ、
白い、なのに、二十、日向は永遠に遠い、や
つのつららが、喉に当たる、冷たい、やつの
唾液が肌の上で、結晶になる、どこか遠くで、
フラッシュの充電ランプが発光している、あ
たし、は腕を、やつの口の中に突っ込み、シ
ャッターを、押す。閃光。




四。


 空がまぶしい。
 あたしの眼と同じ色をし
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