「 いつか、どこかで春が。 」/PULL.
シュまでは時間が掛かる、この
影の向こう、あの日向まで、は距離がある、
遠い、どうする、やつがこちらを向いた、ぽ
っかりと熔けたやつの眼からぽたぽたと、水
が落ちている、耳まで裂けた口からはぎちぎ
ちと、鋭いつららが迫り出し、あたしのあた
たかい肉を、求めている、息が白い息が白い、
あたし、は雪まみれになりながら必死で、逃
げる、逃げる、やつ、は一歩ごとに形を整え、
かたまりながら、追い掛けてくる、日向まで
二十メートル、十五、十三、やつは完全に形
を整えた、凍った、かたまった、十二、フラ
ッシュはまだ間に合わない、十一、十、九、
腕、がやつに掴まれた、服の上からでもやつ
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