「 いつか、どこかで春が。 」/PULL.
白い息をひとつ吐いてあたし、現実に、
戻る。息は、眼の前を重たく、漂って、やが
て現実に馴染むように消えて、しまう。あた
し、はそれを追い掛けて、一歩一歩、歩いて、
いる。
二月の陽射しは拗ねるように斜めで、影は
長いから、あたしはなるべくそれを避けて、
歩いて。歩く。
さくり、さくり。
踏み締めるごとに雪が、啼く。啼き声は、
あたしを安心させてくれてあたし、息を付く。
息をして、息を吐き、息をして、息を吐きあ
たしは、一歩、また一歩と、歩き。歩く。歩
いて、続けているだから雪が、啼く。啼いて、
いるあたしは、その、雪の上を息をして、息
を吐き、歩いて、
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