遠ざかれ/九谷夏紀
 
は眠っているだけなのだということを
ただ忘れてしまっていただけのことだ

身を削るような時が過ぎれば気付く
ようやく手に入れた
すきとおる目の玉
陰のささやき
あざやかな輪郭と折り目
波動を呼ぶ青空
スリムな頬と
反射するほどの息継ぎ
目の前が拓けて
見えすぎた幼さ
君だけじゃなくて
家族中の尊敬は溶けてはがれ落ちた
知っていたはずの誠実はまやかし
体面に消えるやさしさ
これほどまでに泣いてしまえることを
知って優越感に浸れるくらいになれ 君よ
すばらしいものを得たに違いないのだから
傷ついたって良いと思わないか なあ 君よ
すべて奪えるほどに
張りめぐ
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