遠ざかれ/九谷夏紀
 
めぐり合った触手で絞めあうだけの
たった4年でも
家族になろうと決めた覚悟の下で

さあ遠くから棲みつくといい
言葉は洩らさず
たったひとつできることの意味を
未だに君は気づかない
ひとりで思い出の中
居るその女は幻
君とその女がかつて作り出した
もうどこにも居ない女
そろそろ行かないか
わかっているのだろう
その女が居なくなって
悪いことばかりじゃないことを
気が気じゃなくて
遠くからでも
君の残した息吹きに
時には助けられている
苦しみ

君よ
安心しても良いくらいだ
もう3年も経つというのに
こうしてこのままで居られているのだから
二度と会わない
誰よりわかってしまっている
くすぶりが馴染みすぎて
忘れたような気がすることはあっても
君はそうしてゆけば良い
もっと太刀打ちできないくらいになったら良い
そうしてぐんと遠ざかったら良い

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