「奥へ」/菊尾
 
ふたりが消えてしまっても
誰かが伝えてくれる
瞼を閉じたらそれが合図だよ
このままでは居ることができないから
忘れるために出かけよう

降り出した雨
僕たちの膝下が見えなくなって
小さな波紋は大きな波紋に飲み込まれて
冷たいはずなのに分からない
靴はとっくに脱げてしまったよ

流れて行く灯籠を数えていた
藍色の中で温もりだけを望んだ
結論は出ないままで
紛らわすように
石を対岸へ滑らせていた

時間に限りがあった
僕たちの方法は間違っていたけど
それ以外には何も無かったんだ
誰かの呼び声がしても今は迷わず進むだけ

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