批評祭参加作品■怠惰な物差し ??あるいは違犯と視線について/岡部淳太郎
 
。ましてやそういう思考法が違犯者に対して向けられると、人々の視線は冷たいものにならざるをえない。他人について本当に理解しようと思わないから扱いはぞんざいになるし、他人のことを本当に考えようとしないから自らの心も人からの良い影響を受けずに狭い範囲に留まったままになってしまう。そこから現代社会が抱える人間の関係性を軸にした諸問題までの距離はほんの一歩であろう。
 他人に単純な図式を当てはめて、何となくわかったつもりになるのは罪深いことだと思う。そうして当てはめた図式は便利な物差しではなく、怠惰な物差しであるということに気づくべきであろう。突出した個性を持つ者を前にして「きもい」のひと言で済まそうとす
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