批評祭参加作品■回り道、つぶやく。 ??五十嵐倫子『空に咲く』について/岡部淳太郎
あるとは言え、ある種のレトリックとして作用してもいるからだ。
これまで見てきたように、この詩集には物語はほとんどない。語り手の心の動きが詩集の中の主人公として立派に機能しているから、物語が入りこむ余地がないとも言える。だが、ひとつだけ例外がある。「エマ」と名づけられた作者の母の死をテーマにした詩がそうだ。
{引用=?きもだめし?ってしたことある?
私はね 真夜中に墓地に忍び込んだことがある
墓地には灯りがひとつも無いから、真っ暗闇なんだよ
石の路を踏み外したら
よろけて土の上
しっとりとやわらかい感触にビクリとした
一面の墓石がぼうっと闇にひそんでいたよ
だけど会いたく
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