批評祭参加作品■回り道、つぶやく。 ??五十嵐倫子『空に咲く』について/岡部淳太郎
んなふうにして、人の心は日々回り道をしている。誰もがそうと意識することなしに、自らの中での彷徨を日々体験しているのだ。
五十嵐倫子(のりこ)詩集『空に咲く』(二〇〇六年・七月堂)を読んだ。ここにはいま述べたような人の心の中の日々の回り道が、飾ることなくつづられている。いっけん平明な詩のように見えるが、心の動きの過程を克明に記しているので見かけ以上に難解なところがある。
{引用=日曜日の夕方
このまま終わってしまうのはいけないような気がして
外に出てみる
ショッピングセンターまで歩いていく
1階から6階まで くまなく歩き回って
もう何も見るものが無くなってしまって
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