批評祭参加作品■〈日常〉へたどりつくための彷徨 ??坂井信夫『〈日常〉へ』について/岡部淳太郎
 
ったのか
(「15」)

真夏の陽をあびて ひとりの骸骨が
いまにも崩折れそうになりながら立っている
かれはいつからバスを待っているのかと
まるで奇妙な問いがわきあがり
その掌には硬貨が握られているかと
サングラスをはずして顔を近づけると
骨だけの手の甲に黒い穴があいているのだ
まさか釘男のなれの果てではないだろうと
ひとりの骸骨を しげしげと眺めた
すると首から紐が垂れさがり
焼けこげの板がいちまい ぶら下がっている
そこに書かれた文字は判読を拒んでいるが
ただひとつ「××の王」とだけ読めた
(「17」)}

 ここで引用した「15」にはこの後「そういえば か
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