批評祭参加作品■〈日常〉へたどりつくための彷徨 ??坂井信夫『〈日常〉へ』について/岡部淳太郎
 
をかぶり おし黙って
ただ嵐が通過するのを待っているのだ}

 これを見ると、犀は人間でない者、人間でありながら人間としての常識やルールを理解していない者ということになる。だが、これだけだとただ単に迷惑を顧みない若者で終ってしまっていて、それでは少し弱い。あともう一箇所犀が登場するのは詩集最後の「25」においてだが、せっかくなのでこの章は全行を引用してみよう。


{引用= 横浜上麻生道路に立つと、二十年まえに走
り去った暴走族のすがたが甦る。あのころ犀
であった少年たちは、いまどうしているのだ
ろう。みんな十年かけて人間になったあと、
ジャンクフードを貪りながら労働にまみれて
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(1)