批評祭参加作品■〈日常〉へたどりつくための彷徨 ??坂井信夫『〈日常〉へ』について/岡部淳太郎
 
のうえに小さな突起物が生えて」「両肢は かたい皮膚で覆われ」、話者自身が犀になってしまう。新聞を見ると、「昨日の犀変身者は○人」という記事も出ている。人間が次々に犀に変身しているという事態が、ここでは起こっているということがわかる。
 さらに犀の登場する場面を見ていくと、「10」にこの犀の謎を解くような詩行が出てくるので、これも引用してみよう。


{引用=深夜の横浜上麻生道路を
けたたましい爆音で走りまわっている
あれは暴走族ではない――あれは
夜になって犀に変身した若者たちだ
(中略)
もう かれらをパトカーは追わない
夜中の一時に110番する住民もいない
みんな毛布をか
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