僕がしあわせを噛み千切ったものがたり。/示唆ウゲツ
 
たかわいい女の子がやってきました。
年齢は僕と同じくらいでしょうか、ハタチ前後に見えます。
「お誕生日用のおおきなケーキください」と僕に尋ねたのですが、
その日は生憎、売り切れでした。彼女はひととおり落胆すると
「じゃあそのきれいないろのケーキを5つください」といいました。
それから「あと、悪いんですけど蝋燭を5本もらえますか」とも言いました。
そのときの彼女の笑顔が、店の蛍光灯より眩しかったので、
よっぽど大切な人たちとの誕生会なのだろうと思いました。
「判りました」僕はケーキをハコに詰め、保冷剤をふたつ入れ、蝋燭を5つ入れました。
会計をしている間、彼女が小銭を探っている間、
[次のページ]
戻る   Point(1)