批評祭参加作品■気分と物語/岡部淳太郎
ドラマなど多くの物語が氾濫する現代にあってはそれらが振り返られることは少ない(元々読まれていないのだから振り返るも何もないのだが)。何より詩は抒情であり詠嘆であると規定してしまった人々にとっては、詩を読むより前にそれ以外の多くの物語を簡単に享受してしまえるのだから詩ははなから考慮の外に置かれてしまっているのだ。思うに現代は物語が氾濫した時代であるが、逆にと言うべきかそれゆえにと言うべきか、物語の氾濫の度合いに比例して人々は物語を求めつづけてしまうようなところがある。物語というからにはそこには流れがあり骨格がある。ひとつひとつの場面を際立たせるための筋肉や贅肉もあるだろう。言わば読んで納得できるだけ
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