批評祭参加作品■気分と物語/岡部淳太郎
 
した抒情や詠嘆といったものは社会から離れてひとり別の道を行っているというイメージで捉えられやすく、和を尊ぶ真面目な日本人からすると単に怠けているだけのように見られてしまうのだ。風流という言葉があるが、それはひとり俗世間から離れて気取っている鼻持ちならない態度だというふうに受け取られやすいのだ。
 ここまで見てくると、日本人が詩に対してネガティヴなイメージを持ってしまう理由が何となくわかってくるだろう。だが、問題はそれだけではない。先ほど指摘した物語の欠如というものが、人を詩から遠ざけさせる大きな理由のひとつとしてあるように思える。現代詩には物語的要素を持つ作品もいくつか見られるものの、小説やドラ
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