山道で蹲る、由美子/N哉
 
すぎてわからない、そこで最も相応しかったと思う相手を当てはめることにした。
 それは一年前の秋、高松の外れの山寺で出会った男、やけに毛深いなりをした優しい目のその男は、私を一晩中抱き続けた。彼と別れた後、もう二度と思い出すまいと考えたが、しばらくの間は他の男に興味すら持てなかった。
 あれこれ考えているうちに、医者は私の身体を乱暴に動かし、その際私ははっきりと耳にした。

「子供を産んだら死ぬだろう」

 医者の冷淡なその声を!そしてかすれがすれに聞こえてきたのは、その場には今まで居なかった、老婆でも医者でもない新たな、それはとても小さな生き物の鳴き声。しかし私はそんなことはどうでも良
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