批評祭参加作品■現代詩の記号論2/葉leaf
 
釈は原則として相対的である。Ex2aとして紹介した「船粒」は、「船の本質を粒状に凝縮したもの」という解釈のほかにも、たとえば「船を構成する原子・分子」、などの解釈を許容し、それらの解釈はどれが中心的というわけでもなく、原則的に等位である。
 ACSでは解釈の可能性の広がりが前面に出てきて、そのあいまいさ、含蓄の深さが読者に独特の情緒的作用を及ぼすことがある(場合によっては美感を喚起する)。たとえば「時間を抜けおちる光」を読むと、読者は解釈の可能性の広がり(これはしばしば「豊穣である」と感じられる)に直面し、分からないなりにもなんとなく「いいなあ」と思う。詩人が意味論的コードを拡張したり統辞論的コ
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