批評祭参加作品■現代詩の記号論2/葉leaf
ひとつひとつの霧分子の硬い表面には権利が駆けめぐっている。創世記の時代には、権利は太陽の核内のねじれた闇のなかで、憂鬱に葉を茂らせていた。太陽が天球へとしずくを落としはじめると、権利は種となり、地上の分子たちの喜びの籠に下獄した。
「権利」は「自己のために一定の利益を主張したり、これを受けたりすることのできる法律上の力」という表示義(通常の意味)を持っている。この引用部では、それを前提とした上で、「権利」の意味内容に、新たに「権利の観念的内容を物質化した植物体」という共示義が付け加えられている。この共示義の付加は、文脈によって行われる。この引用部で作者は、「権利」という語を通常の文脈から引き
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