死んだアイツのことなんて、どうでもいいと思っていた/わら
 
した




アイツのことは知っている
同じようなものだ

繰り返す空白の中で
人との接し方を忘れていった
そして、境界を見失った


ビデオテープのからまる音がする
ぱりぱりとコンビニのおにぎりが響いている

そんなものだけが
カラダの中にしみ込んでいった


週に一回、一本だけ、
無機質な陳列棚のカベのすき間で
好みのアダルトビデオを借りてきて

何度も、同じ、それを見ては
毎晩、寝る前にオナニーをする


そんなものが日々のリズムを刻んでいた

ソイツにとっては
それだけが日々の中の、唯一の幸福だった




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