死んだアイツのことなんて、どうでもいいと思っていた/わら
こうにかすむ雄大な草原
そして、
砂ぼこりの舞う大地の中、
空よりも大きな太陽を背に
マントをまとい立つ、その男の姿には、
胸を打たれるものがあった
彼が帰ってきて
写真家になりたいと話しはじめたのは
必然だったのかもしれない
そういや、おれも、
いつかのときに、
ひとりでアメリカの地を旅したことを思い出す
西海岸沿いを歩けるだけ歩いて
倒れこむように眠る
金もありはしなかったから
半分は野宿だった
人も少ない崖の上で
水平線の海に陽が沈んでゆくのをながめ、
冷え込む夜に、震えながら眠っていた
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