応接間の < 琴 >/ましろ
 

「これなあに?」
「おこと」
祖母はそう言って、さっと布を取り
袖をまくり上げ、爪に大きな爪のようなものをつけ
正座になって弾いた。

〜さくら さくら 
  のやまも さとも みわたすかぎり
  かすみか くもか あさひに におう
  さくら さくら はなざかり

 さくら さくら 
  やよいの そらは みわたすかぎり
  かすみか くもか においぞ いずる
  いざや いざや みにゆかん     〜

私も少しだけ祖母の真似をして弾いてみた。
「習ったらええがな?」と音にひかれて集まってきていた
親戚のおじちゃんの誰かに言われたけど恥ずかしくて逃
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