もう風の中にもない(教えてくれなんて初めから言ってなかった)/ホロウ・シカエルボク
無人駅の廃れたホームに立ち
缶コーラの
残り数滴を啜り
サヨナラのハンカチがたくさん舞うような
一月の空のメランコリーを見ていた
時間は午後
暫定的に午後
そうと知っていたものが
次々と
暗い穴に流れて消えてゆく
ひとつとふたつと一枚二枚
財布の中身を数えて
気まぐれな切符を諦める
少しは利口になった
でも
見ることの出来ない景色が増えた
誰もいない
田舎町の歩道を
凍えながら歩いていると
コートの内側の
はぐれた何かが呻いた
おまえは劇的だ
クソつまらないイギリス映画みたいに
何もかもモノローグみたいだ
物憂い顔をしていなくっち
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