終わりに着いたねと君は言った/Utakata
 

けれど今ならまだ
語るべき事柄はまだ残っているはずだった
今ならまだ





今ならまだ
大地のことを話すことができる
君と
(まだ忘れられていないことなら まだ語ることができる)
例えば
例えばそれは裸足の足の裏が持っている記憶
柔らかな初夏の草の上をどこまでも歩いていく記憶
地下道のなかで発酵した泡のように響く無数の足音の記憶
例えば
例えばそれはずっと昔
今はもう溶けてしまった大地の上で
初めて二本足で立ち上がって辺りを見回した僕らの
僕らの祖先の記憶

そういったものたちのことを話すことができる
君と



終わりにはもうたど
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