終わりに着いたねと君は言った/Utakata
たどり着いてしまったので
これからはもうどこに行く必要もない
無垢な
果てしなく無垢なおはなし
*
僕たちのいる場所が溶けはじめてきたので
僕たちは大地の中心のほうへと移動する
僕たちの声は水平線に囲まれるなかでひどく小さくなってしまったので
僕たちはお互いの口を耳に近づける
僕たちのお話が続く限り
僕たちの声はまだ死なないことが分かる
そして僕らが一言ずつ言葉を発するごとに
お話は確実に終わりに近づく
(だから)
だから僕たちは際限のない話を続けていく
子供の頃
よくそうしていたように
手と手を合わせて
*
君にいままでで一番近づけたような思いを持つ
僕らの声は
まだ辛うじて生きている風が運んでいくだろう
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