七人の話 その5/hon
ら離れた人目につかない林に囲まれた山道に出るのよ。あのね、はっきりいうと、そんな抜け穴には実用的ないし戦略的な価値なんてまるでないの。だって、考えてごらんなさい。そのブショウにとって、自分の城を敵に攻め込まれて、その城の内部に敵兵が侵入してきて、そんな抜け穴から脱出しなきゃならないほど追いつめられた状況って、どんだけよ。もう、すでに敗北済み。今さら出ていって逃げてどうすんの、って感じじゃない。してみると、抜け穴に実用性なんかないのだわ。つまりね、そのブショウがつかの間の平和な時に、そこで日々の雑務をこなしながら、ときおりその抜け穴のことを考えるのよ。『おれは出て行ける。おれはいつだって、この抜け穴
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