七人の話 その5/hon
 
け、悠然として睦夫を部屋の中へ招いた。彼はおずおずと部屋に入り、部屋の中央、ベッドの脇のあたりに立った。
「ねえ、なんで私がここを自分の部屋に選んだか、あんた分かる?」
 彼女はいった。分からないので、睦夫は首を横に振った。彼女は続けていった。
「ニッポンの昔のセンゴクブショウは、自分の城を建てた時には、必ず天守閣の頂点にある自分の居場所に抜け穴を用意したというわ。それこそ、床の間の掛け軸をペラリとめくると、その裏側には丸い、人一人が通れるほどの穴があって、緊急時――敵に攻め込まれた時――なんかには、そこを通ってずっと降りていくと、地面に水平に掘られた地下通路を抜けていって、やがては城から離
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