七人の話 その5/hon
考えもなしにうなずいていた。秘密があるのならば知りたい、となんとなく思った。もとより、その時にはもう彼に拒否権があるとも思えなかった。
「秘密を知るものは、秘密を守らなければいけない。これはむしろ当然のことだったわね。いいわ。さあ、ついていらっしゃい」
志穂子は踵をかえして、階段を上りはじめた。睦夫は素直に従うほかないらしい。彼女は二階の通路を足早に進み、自分の部屋へと向かっているようだった。途中で、歩きながら彼女は後ろの睦夫にむかって、
「あんた、まだ女の子の恰好なの?」
と、呆れたようにいった。
睦夫は志穂子の部屋の開かれた入り口に立っていた。
睦夫は彼女の部屋に足
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