七人の話 その5/hon
 
ち位置の関係だといえる。
 (ぼくは……ワナにはめられている?)
 総合的に考え、そう判断する他なかった。彼はある種の非対称的な罠にはまっている。なぜだかわからないが。罠を仕掛けたのは彼女。ちょっと悔しいのだが、ここは引き返すしかないのではないか。そう考えて、彼が黙って振り向いて階段を降りようとした、その瞬間をまさに狙いすましたかのように、志穂子が口を開いた。
「あんた、秘密は守れる?」
 振り向こうと始動した瞬間に声をかけられて、彼の体は硬直した。質問の意味が良く分からないので、彼は黙って彼女の方を見ていた。
「あんた、秘密を知りたい?」
 重ねて、彼女は質問した。睦夫はたいした考え
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