七人の話 その5/hon
気は彼女の背後の頭上に光っており、その表情は逆光になってよく見えないのだった。
二人は向き合って対峙したまま静止していた。睦夫にとっては気まずい沈黙だった。後ろへ引き返そうか。しかし、ここまでやってきたものをあえて引き返すというのは、どうにも敗北感というか、抵抗を感じる。
そのうち、睦夫にはこの関係はどうにも不公平だと感じられてきた。志穂子の顔は逆光でよく見えないのに対し、睦夫の顔は灯りに照らされているので、はっきりと志穂子の側から見える。これは一方的な関係であるといえる。そして、彼女は階段の上位を占めており、そこから睦夫を見下ろしている。これは睦夫にとって非常に心理的な抑圧を覚える立ち位
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